ットで話題になっていたのを見かけたのが今年の春で、いそいそ予約して順番待ち。
届いたのが秋、まだ暑いから秋って感じはしませんが。
こんなふうに母は娘を抱きしめたりしてないと思うな~

58歳の母親を30代の娘が刺殺、バラバラにして埋めていた遺体が発見されるところから始まります。
娘は医学系大学を目指して9年も浪人していたのが報道されたので、なんとなく知っている人はいると思います。現場は滋賀県。

わたしは教育虐待に興味を持っているので届くまでの間に事件のあらましを週刊誌のネット記事で読みまくっていたんですが、ぶっちゃけ書籍版は大差なかったです。

●「自分」がない


書籍版で初見だったのは、娘:あかり(仮名)の文字です。
著者とやり取りした手紙の文字が載っていて、司法の場でも「きれいな字ですね」とコメントされていたのですが、著者が言うほどきれいな字に思えなかったです。
読み手を慮って「仕上げた紙面」といえば通じるでしょうか。
たんに心情を認(したた)めたというより、そういう「ポーズ」が見えるんです。
縦画に特徴があって、「年」は独自の崩し文字だし、丁寧に書かれているかもしれないけれど、読みやすいとはいい難いというのがわたしの印象。

著者は記者出身で初の書籍、サクサク読めます。
午前中に借りてその日の内に読めてしまい、まだ予約者があとに多くいるからさっさと翌朝返却しました。

ところどころ意味不明な記述があり、母と娘は仮名なのに「あかり」の名前の由来が書かれていたり、母親はもともと「おおどり」生母がオードリー・ヘップバーンのファンだったから。成人後「妙子」に改名とあって、それいる?
なにか事件に関係あるのかと思えばそうでもないし、妙子の生母の人格を表現したかったのか??

そもそも犯人であるあかりの記述ばかりで、殺害された母親妙子についての情報が極端に少ないです。
「おおどり」と名付けた生母(あかりにとって祖母)は妙子の父親と結婚せず、別の男性と結婚。
妙子の面倒を妹など親戚に任せ、アメリカ人と結婚して渡米(アメリカにいるおばあちゃんだから“アメばあ”と表記)、妙子も成長して渡米するがアメリカに馴染めず帰国、見合い結婚してあかりを出産ぐらいで、妙子がどんな人物でどんな育ちなのかの詳細が全くわかりません。あかり目線ではただただ狂人です。

妙子はこのアメリカ人の義父が歯科医で裕福なのを体感し、アメばあからも結構な額の金銭援助を受けているため、あかりには医師になることを強要、いわゆる地元の公立学校をとことん下賤に見下しています。
あかりは子供の時から妙子の選民思想の影響を受けていたと思います。
友人が少ない(たぶんいない)のもわかります。
こどもって「違い」に敏感で、またそれを口にしますからね。
友達がいない理由はあかりが太っていて服装が変だから、だけじゃないでしょう。
母の言うなりに生きるあかりは「自分」がないから、こどもが一緒にいても楽しくないのが容易に想像できます。

三者面談で「医師を目指すのにふさわしくない」と断じた教師の目、プロやな。

●孤独から抜け出すのは容易ではない


父親との関係は悪くなかったけれど、妙子がめんどくさすぎて父は会社の寮で生活することになり、母娘二人と犬と暮らしていたあかりは、相当孤独な環境です。
母親の干渉がすごいから孤独だと感じないだろうけれど、紛れもなく孤独。

メールとLINEの母娘のやりとりをみると、罵詈雑言が長文で掲載されています。
ですが、スマホで見るのと「紙面で縦書き」で見るのとでは随分ストレスがちがうと思います。
わたしは母親の罵詈雑言には滑稽なものを感じました。
こうやって視線を変えると、自分のいる世界が随分狭くて小さいものだとわかるのですが、孤独と絶望の渦中にいるとそれは見えないんですよね……

あかりは母親の口座から100万引き出し、保険証を持ち出すぐらいの知恵と度胸はあったんですが、何度か家出しても探偵に連れ戻されています。
いやこの家、どんだけ資産あるの??
父親の給料(3万円だけ父に渡し、あとはまるっと母が管理)でこんな生活できる??
アメばあの支援金額、相当なのか??

疑問を書くのはこの辺にしておきますが、サラッと読めてしまう分内容は“浅い”としか言いようがありません。
初めての著作ということで点は甘めにするとして、もっと精進して下さい。
ネット記事で十分だったという評価は揺るぎないです。

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