最初にお断り、この本の初版は2018年4月20日なので、ここに出てくる「ワクチン」とはCOVID-19ワクチンのことではないです。
ヒブ、百日咳、麻疹、おたふく風邪、ポリオ、ヒトパピローマウイルス(HPV)、そして天然痘の時代まで遡ります。
反ワクチン運動がどうやってスタートしたのか。
有名なのはみんな大好きメリケン様の1970年代百日咳ワクチンなのですが、その150年前、1850年代エゲレス様において種痘つまり天然痘ワクチンの反対運動が大本です。
反ワクチン運動の真実: 死に至る選択
よしながふみの「大奥」は天然痘モチーフであろう男性にのみ感染する赤面疱瘡(あかづらほうそう)がでてきます。8巻から種痘開発のストーリーが展開します。
赤面疱瘡は野生の熊から感染するのですが、天然痘ワクチン開発のきっかけは牛でした。
1800年代イギリスに於いて反ワクチンの医師、保護者のコメントは、P186~
「角のようなイボに覆われている」「全身が黒い毛が生えた斑点で覆われてニグロのように」なってしまった
など、馬鹿げた主張が多かったのです。
牛由来のワクチンで牛になるわけないやろ。
鳥の卵を使ったインフルエンザワクチンで誰も羽が生えていないのと同じく、荒唐無稽に思えるでしょう。
このような主張は、学がなかったからされたんだと思いますか?
反ワクチンの弊害について書かれていたこの本にも出てきますが、今の反ワクチンは学歴もある裕福な階級に浸透しています。
1970年代の百日咳ワクチンについても論証に使われた論文の誤りがその後判明するのに、科学に全く耳を傾けない有様です。
わたしは反ワクチンと陰謀論って似てると感じていたので、橘玲氏の
ヒトの脳はもともと陰謀論的に思考するよう「設計」されているのだ。
この下りを読んで腑に落ちました。
そしてこれも今に通じる致命的な点ですが、科学の語りは「冷たい」ため、大衆に響きません。
ワクチンのせいでさっきまで元気だった子供が死んでしまったと感情的に訴える力の強さに、科学はただひたすら冷たく見えてしまう。
たとえ正しくても、「いちたすいちはに」と納得できない心情を、科学は汲み取ってくれないです。
P198には医師自身がこの現状に「我々が変わるべき時期に来ている」と論説が述べられています。
アメリカは「ワクチンを打たなければ登校してはならない」と感染症の広がりを防いできたのですが、次に立ちはだかるのは「宗教」、これもまた科学と大変に相性が悪い。
親の宗教がワクチンを禁じている場合、ワクチン免除とするという法案が1966年6月ニューヨーク州で通過します。
クリスチャン・サイエンスの陳情活動の成果が何を招いたのか、国立感染症研究所感染症情報センターに載っています。
第八章からは現在に近づいていきます。
「結論は出た。予防接種をしないという選択肢は感染症にかかるリスクを増やす。感染症にかかれば死亡する可能性もある。更に悪いことに、近隣の人たちも危険に晒すことになる。ではなぜ、予防接種をしない選択をする親が増えているのだろう?」P224
日本もワクチン副作用や薬害訴訟の影響で、集団接種がなくなって久しいです。
Yahoo!ニュースの「ワクチンを打ったあと、○○の症状が」という見出しに反応してしまう方は、メディアの感情的なテキストに溺れるよりも書籍を読みましょう。
そして、今後COVID-19ワクチンの対象が子供に拡大されたとき、メディアが何を書くのか予想してみるといいです。
たぶんその予想は当たるでしょう。
反ワクチン運動の真実: 死に至る選択
同じ作者+翻訳者コンビの本を以前も読んでいました。