Amazonのレビューがめっちゃマニアックで、関連書籍の紹介リンクをいちいちチェックしてしまった。



取り上げられているのは以下12の疫病と、
・アントニヌスの疾病
・腺ペスト
・ダンシングマニア
・天然痘
・梅毒
・結核
・コレラ
・ハンセン病
・腸チフス
・スペインかぜ
・嗜眠性脳炎
・ポリオ

誤った治療法ロボトミーです。

なにがびっくりしたって、スペインかぜがスペイン発症ではなくアメリカ発症だったこと。嗜眠性脳炎は未だ治療法がないこと。
近代の病気は概ね治療法ができたイメージを持っていたのですが、全くそんな事はなかった。

単に、エピデミックから生き残った人がいたとか、なんとなく耐性ができた人がいたようだという、個体差によるある種のラッキーでいまがあるのかと、自分たちの足元の危うさにめまいがしそう。
でも、天災が起きた時もそう思う。
病も天災も、貧富関係なく等しく降りかかるという点で同じ。

著者は女性です。
文体の随所にユーモアがあるのとシニカルワード山盛りで、すごく好き。
読んでいてとても楽しかったし、共感できるところがたくさんありました。
大阪人は面白いとは言われますが、ユーモアがあるとは思えないんです。

腺ペストの項目では、疫病の原因がユダヤ人だという噂が広まり、
「中世のキリスト教徒は、ローマで自分たちが迫害された時の恐怖からなにも学ばなかったらしく、躊躇なく集団でユダヤ人を迫害した」P40
この部分とか、とてもシニカルでいい。

わたしが歴史を学ぶのは、同じ過ちを繰り返さないためという学びと常に最悪のことを想定していたいという臆病な心情からですが、学べば学ぶほど
「人は歴史から学ば“ない”」
ということに打ちのめされるんです。

ポリオの項目で触れているワクチンの集団免疫について、
「集団の80~90パーセント予防接種を受けた場合のみ機能する。麻疹など一部の病気では95パーセントが必要だ。だから、ヨガ教師の影響で、子どもに予防接種を受けさせず、その代わりにブドウをたくさん食べさせることに決めた人が相当数いれば、免疫者の人数が集団免疫に必要なパーセンテージを下回るまで減少する。」

あれほど苦労して疫病から免れるワクチンを開発したというのに、いまのアメリカ、1歳児は麻疹の予防接種を受けた割合がジンバブエよりも低い。
なんでこんなことになったのか。
歴史の勉強はなんのためにしてきたのか。
暗澹としませんか。わたしはいつもそうです。

作者も同じことをエピローグで書いています。しかし、ポリオがほぼ撲滅された経緯を、ペニシリンの存在を思い出すと続けていて、「前へ、上へ進もう。」と締めています。
ああ~同じような歯がゆさをずっと持っていたからこそ、まさかのエピローグに、この本を読んでよかったー!! と大カタルシスでした。

これだから、これだから歴史の勉強は好きなんだ!!
そして相変わらず原書房の本は信頼できる。
翻訳本は厳しい状況だと聞きますが、どうか生き残って欲しい。



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