上先生の著作を読むのは初めてです。

外務省のラスプーチンと言われた魁偉、佐藤氏との共著。


お二人とも文筆、講師を生業としているので、全部同じことは出来やしません。
だから文中何度も「時間の無いビジネスパーソンは」と一般会社員向けのアレンジアドバイスがあります。

書籍の読み方って学校では教わらないし、社会に出ても誰かに習うことがありません。
わたしも人が読んでいる本は気になり、つい電車の中で見ちゃうけれど、その人がどんな風に読んでいるかまではわからないです。
だから本や情報をこんな風に読んでいます、取捨選択していますというのを、できる人から教わるのってすごく大事だし、それが1500円でわかるんですよ。
なんてお得なんだろう。と言いつつこれは図書館で借りた。気に入ったので買ってもいい。

新聞の読み方はお二人それぞれ違っていますが、いずれもなるほどと思いました。
特におもしろいのは第3章「僕らのネットの使い方」です。
ネットはスマホのおかげで誰でも使えるツールですが、上級者向けのメディアです。

その上のんべんだらりといつまでもネットサーフィンして気がつけば時間泥棒、なのにその間得たものは何一つないという悪魔の誘惑ツール。
お二人ともそれは重々わかった上で、つきあい方の工夫をされています。
例えば電子書籍はネットサーフィンしないよう専用端末のKindleで読むとか。

極意35 グーグル検索は実は効率が悪い

というのは、ほんとに仰るとおりです。
悪徳業者と戦うためか、格段に検索効率が悪くなり、調べ物に使えなくなりました。
Wikiも同様です。
つい使ってしまうのですが、随分と精度に差がある。
文筆の仕事をされているだけあって、確認したい事柄にはこういうサービスを使っているというリストがとても参考になりました。
サービスの見極めポイントまで書いてくれていて、ほんと親切。

そして、極意39より抜粋。
「パソコンやタブレットはまだ、うまく使えば知的世界に行くことができますが、今のところスマホはそういう使い方に向いていない」
パソコンユーザーなのでずっと気がつかなかったのですが、同じサービスでもパソコン版とスマホ版で随分中身が違うんですよ。
スマホ向けに機能がぐっと減っていたり、ニュースも簡略化されていたりと、同じところを見ているようで全然違うという、この状態はちょっと怖いと思いました。

池上先生が東大で講義をしたとき、同行していたテレビ局のプロデューサーが、「歩きスマホをしている東大生を一人も見ない」と気がついた。
他の大学を見ているからこそ、わかるんだなー。
「メリハリをつけた時間の使い方ができないと、一流の大学に合格しない。学習論というより家庭でのしつけの問題にもなりますが」
当然ですが親がだらだらやってて、子どもにスマホやるなというような家庭は論外です。

第4章「僕らの書籍の読み方」
「本の情報は安い。本一冊に書かれたものと同等の情報を、人から通して得ようと思ったら、食事代や謝礼など、本題の何倍も費用がかかります」「セミナーや講演会も同様。」
そうなんですよねえ、昨今の起業ブームでやたらセミナーが多いですが、起業についてきちんとした書籍の方がよほどしっかり作られているし、費用も安い。
「わざわざ交通費をかけて、時間をかけて行ったこと」の方に価値を重きにしがちだけれど、違いますよ。

本の選び方で、タネ本をしっかり読めというのは、目から鱗でした。
つまりどんな本にもタネになった基本の本がある。
テーマの初期に出された本で、以降の本はその中身を読みやすくアレンジしたもの。
情報が一番たくさん載っているのはタネ本である、と。

これは実体験があります。
足靴関係でいただいたある書籍のコピーが、専門的すぎて読めなかったんです。
でも数年後、さらさら読めて理解できました。
後発本をたくさん読んだことで土台ができて、タネ本を読めるようになったんです。
読めなくてもタネ本を置いとくことは、自分の理解度を測る上でも指針になる。

古典については全く意識したことが無かったので、頭が下がる一方。うーん知的だ。
そして多くの方が言うであろう、読書する時間がないについては極意59にあります。
「ネット断ちと酒断ち」
「極論をいえば酒を飲むのは人生の無駄」
わたしはお酒がダメなので、飲酒がどれほど時間を奪うのかを気にしたことはありません。
「飲んだら酔いが醒めるまでのあいだ読書や仕事ができず、それがもったいないと思うようになった。」
「二日酔いはただの中毒症状」
50歳を過ぎて残り時間を考えるようになり、無駄なことは出来なくなったという佐藤氏の言い切りはごもっとも。50じゃないわたしでもそう思いますよ。
あと、飛行機内での読書は気圧の影響でできないというのは、あー! と思いました。そうなんですよ、わたしも電車移動感覚で持ち込んだ本が全く読めなかったんです。酸素量の違いか。

コラム4に「だまされないための訓練」として、良質なミステリー小説を読むことがすすめられています。騙しのテクニックとか、すごいですからね。
小説で疑似体験や代理体験を積んでおくことが大切だと。

小学生の頃から20歳過ぎまでミステリーばかり読んでいたので、逆に臆病すぎるところがある。でも騙されやすい自覚があるから、これぐらいでいいんだよきっと。
横山秀夫の著作、読むことにしよう。

最後に
「自分にとって不都合な情報の99.9%は、実は自分自身の口から出ている」
人間は秘密を暴露したい動物という、佐藤氏のことばで締めます。

書籍中程にぺろーんと折り込みがあって、お二人の新聞、雑誌、WEBサイトなど購読リストが一覧でわかるようになっています。
巻末にある特別付録3種もとても親切設計。全部読み返さなくても、ここだけピンポイントでおさらいできるよう工夫されている。
それもこれも、時間の無いビジネスパーソン向けのお膳立てです。
こんだけやってるんだから、何一つやれませんとは言えないですよ。


残り時間は増やせない。早めに読んで早めに実行。