書の秋ですねー。地獄の大阪もいよいよ気温が下がって実に快適です。
わたしは足の冷えから喉に来るので、9月のうちから寝るときはレッグウォーマーをつけて、今年こそ冷えに負けないと迎え撃つ気満々です。

【第2類医薬品】ドルチェ顆粒 9包

でも、足が攣ったときのために「ドルチェ顆粒」はゲットした。
ダイコクにもオーエスドラッグにもないのに、地元のなんてこたない薬局にありましたよ。

では今回の一冊。
「代替医療の光と闇 魔法を信じるかい?」

原題は「The Sense and Nonsense of Alternative Medicine」

そもそも代替医療ってなに? という方は、いつもの五本木クリニックのこちらをどうぞ。
小林麻央さんの行った代替医療、そしてもっと悪質なニセ医学!!

友達にこれおもしろかったよと見せたら、「えーここだけでもういやー」と翻訳であるというだけで拒否されたのですが、「はじめに」をチラ見して「めっちゃおもしろそう、写真撮っとく」とコロッと変わりました。
その「はじめに」の冒頭です。
「アメリカ人は代替医療が大好きだ。身体の痛みをとろうと鍼灸師やカイロプラクターやナチュロパス(自然療法士)にかかる。物忘れをなくそうとイチョウ葉エキスを、風邪をひいたらホメオパシーのレメディを、元気を出そうと目がビタミンを、精力増強をもくろんで漢方薬を飲む。免疫力アップのためにインドのスパイスを食べる」

おもしろそうでしょ。
この次の「序章」では、スティーブ・マックイーンが代替医療にのめり込んでいく様子にショックを受けました。
彼の出演作をなまじ好きで観ていたので、臨終に向かっての懊悩が見えて辛い。
どんな代替医療を採ったのか、詳細はWikiにもあります。
「コーヒー浣腸、シャンプーによる頻繁な洗浄、牛や羊の生きた細胞を含んだ液体の毎日の注入、マッサージ、レートリルを用いたゲルソン療法」

何一つ効果なく病状は悪化しています。
アメリカ人も大概サプリやヨガ、メディア広告に弱いですよね。
そして日本人はアメリカ人がすることに弱い。
ネットワークビジネスで入ってくる医療情報は、みんなアメリカの病院や研究機関の情報です。
わたしがこれまで触れた情報でフランス由来のものは、エンダモロジーぐらいだ。
(フランスは美容、アメリカは健康。サプリに頼る前に脂の量を減らそうよ)

アロマだって、どっちかといえばイギリス由来ですが日本で流行ったのはアメリカからの輸入時で、イギリス由来のアロマは胡散臭く扱われていたし、ヨガや瞑想だってインド由来の方が知られていたときうさんくさい扱いでしたよ。それがアメリカ、NYで流行ってますとなると途端にカジュアルに受け入れられる。

なんでアメリカ由来だと、うさんくさい医療情報もあっさり受け入れられるのか。
わたしが推測するに、アメリカの医療は最先端で進んでいるという思い込みです。
これは日本は新薬の許可が下りるのに時間がかかること。
それと移植手術のため渡米する患者の報道を度々目にすること。
ハワイで出産する芸能人もそう。
こういった日々の報道に入ってくる「なんかご大層な」有様が、アメリカは新しくて効果のある医療に取り組んでいる印象を持つ原因じゃないかと思います。

全然そんなこと無いよ。
あのアパレル地獄(本の感想)を見ての通り、金になればなんでもするのがアメリカ、というか資本主義です。
技術をお金にする錬金術のセンスが卓越していて、パーソナルカラーももともとの考え方はドイツ発祥だったのが、インテリアそしてファッションに応用したのはアメリカ人。
お金へのハングリーさの違いだろうか。
だからアメリカ由来のものって安易に信用できない。
自分で判断できる材料をまず揃えるため、こういった本を読みます。

つづく第一部は「現代医療への不信」です。
医療の歴史を学べて、歴史好きとしては至福。
虫歯の歴史を調べたときも思いましたが、現代医療の素晴らしさよ。
その素晴らしさをなぜ信じることができないのか、なぜ代替医療の方が良く見えるのかが書かれています。

ディーパック・チョプラの名が出てきたことに驚きました。
悟り系のセミナー講師が読んできた著作リストによく出てくる名前です。
エックハルト・トールなんかもそう。

がんの治療薬開発では、日本の製薬会社も出てきます。
中外製薬とか知っているところが出ると、おーっとなるんですが、 第十二章「代替医療がインチキ医療になるとき」には
「京都の会社ファイテンが作るチタンネックレス」
が出てきましたよ。
野球選手だけでなく羽生君もつけているあのネックレスのことか。

【羽生結弦選手 愛用商品】ファイテン(phiten) ネックレス RAKUWA


あるときから突然野球選手がこぞってつけだし、野球ファンの友人もつけていたんです。
肩こりに効くとかいうけれど、ほんまに効果あんの? と聞いたら、実感ないって笑ってた。
だよなあ。

この本では
「もしチタンネックレスが選手達が信じるようなエネルギーを発生させているなら、MRIでは頭が爆発してしまうだろう」
と一刀両断されていて、思わず声上げて笑ってしまいました。
木やニンニクのネックレスをつけているのと変わらない、とも。
あはは。
あのネックレスがニンニクかと思うと、笑けるじゃないですか。

漢方のように自然由来の薬と製薬会社製の錠剤だと、自然由来のほうが効き目があるように感じるのですが、人体の中で起きているのは化学物質の反応です。
自然由来だろうと化学物質の反応であることには変わりはなく、効き目に違いはないということがアメリカ国内で多額の税金を投じていろんな研究所が大規模な実験をして確証とれているんですよ。
ナチュロパスは目に見えないエネルギーによって自然由来のほうが云々というでしょうけど、臨床実験したら違いはなく、むしろ場合によったら自然由来のほうが悪化させたり死亡率が上がっていたりデメリットもある。

健康食品5つの問題[PDF:672KB]消費者庁
このPDFはとてもいい内容。
健康食品とは
画像はPDFより。

でもいくら実験や臨床で結果が実証されなくとも、人は聞きたいことしかきかない。
それで命に害がないのならともかく、現在世界規模で深刻な被害が出ています。ワクチンです。
著者のポール・オフィットは小児科医でロタウィルスワクチンの開発者の一人でもあります。
ワクチンで救える命が失われる、目の前の子どもが親の判断で殺されていくのをみて、啓蒙活動をしているのです。反対派の妨害工作もあり、博士、死なないで欲しい。
博士は鍼灸もぼろくそですが、わたしは鍼灸で体が変わった経験を何度もしているので、そこは持論で行きます。

さすが理路整然としていて、巻末には50ページ近くの原注リストが掲載され、索引もついています。
「ディーパック・チョプラってなに?」と思ったら【た行】、ファイテンは【は行】にちゃんと載ってる親切設計。
こういった引用元を全く載せていない健康本が多すぎるんです。そんな本は便所紙ほどの価値もないのに、売れるからと数多出版されている現実よ。

■命に関わる損をさせても「表現の自由」なのか 健康本を巡る出版関係者の思い
https://www.buzzfeed.com/jp/seiichirokuchiki/kenkobon-04

■「95%が効果を実感」健康食品のあの数値に潜む落とし穴
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52650

こういったニセ健康情報にだまされる方が悪いという声もありますが、子どもの命がかかっていたらなりふり構わないのが親でしょう。どんな情報だろうと一縷の望みをかけるものです。そのようなひとに対しての騙しは、許されるべきではない。騙す方が悪い。

でも「これ飲んだら痩せるっていうから買ったのに、ちっとも痩せなかった」とドテラ(ネットワークビジネス。詳しくは過去ログに)のミネラルに文句言ってたひとがいたのですが、そら仕事を辞めておやつばっかり食べて出かける時間が減れば、太るだろ。
こういう方はお金出したら痩せると思っているので、自分がしたいことをすればいい。
結局お金と暇な時間のあるひとがニセ科学にハマる。
ワクチン問題は日本やアメリカだけでなく、先進国共通です。