たしが過去の遺物(特に書物)が後世に活かされることをやたら気にしてしまうのは、清水玲子の「ロボット考」がきっかけかも知れないです。

清水玲子は繊細な絵とSFが特徴かな。
ストーリーは、肉体的にではなく精神的にわりと残酷。


最近の「秘密シリーズ」のせいで繊細なタッチとグロ描写のリアルさが注目されていますが、そっちよりも精神的ダメージの方がよほど大きいと思います。 おかげで何度も痛い目を見ましたが、やっぱり帰ってきてしまう。

「ロボット考」は雑誌では増刊号に、コミックスだと巻末や合間にちろっと掲載されていたコミックエッセイといいますか、短編マンガです。
ロボットであるジャックとエレナが人間くさい感傷でもって、未来の世界から過去を思うシーンがいくつかあるのです。
月の子―MOON CHILD―
いまは絶版、Amazonにもないので古本市場やブックオフで探して下さい。

文庫ではなくてコミックス版「月の子―MOON CHILD―」第6巻の「ロボット考」は、「哀愁のTOKYOツアー2489年」と題して過去の東京文化をツアコンが紹介してくれます。
そこに東京タワーの説明が
「日本人は熱心な仏教徒だったので、毎朝タワーを拝んでいたと思われます」
「または、ただの処刑台という説もあります」
「いずれにせよ全部埋まってしまったので謎のままです」
とされているんです。

これを読んだとき、すごいショックでしたねー。
ものって説明がないと意味がわからないんですよ。だから発見者(時代)の“経験と知識”でしか推測できない。
時代が変わると構造物の用途ってわからなくなる。
いまのものって別の視点だと非常に儚いものなのだなと、8ページの短編に込められた意味にゾッとしたのです。
清水玲子、またこういう短編書いてほしい。

マンガであれ小説であれ、短編が上手い人でないと長編は書けないという基準があります。誰か作家が言ってたんですけどね。
SFを書くには日常が書けないといけない。
作品に限らずどんなことも、小さなことの積み重ねがなければ、大きなことを成せないのは同じです。

私設ファンクラブサイトに「ロボット考」の掲載リストがあったので貼っておきます。
http://aquamoon.serio.jp/rs/robot_kou.html
文庫版に収録されていないものがあるんです。リスト化助かります。


「月の子―MOON CHILD―」は文庫版全8巻。
意外と図書館にありますね。