PARCO出版、あのパルコの出版事業部です。
http://www.parco-publishing.jp/
パルコなのでカルチャーとかアート系に特化した本を出していたという認識がうっすらある程度。いまはそれほどアート系じゃないです。

その出版事業部内の「アクロス編集室」、いまでもWEB版であります。
http://www.web-across.com/
「定点観測」「消費生活」というコンテンツのとおり、マーケティング分析をしている様子がわかります。
1990年代「別冊アクロス時代を読むシリーズ」という書籍を出していて、その一部を「好きそうだから」と貸してもらいました。
別冊アクロス時代を読むシリーズ
1990年代は学生、ピヨピヨの小娘ですからこのようなマーケティング分析の本はまだ手に取っていません。
“歴史”になるほど古くなっていない時代の本です。
左から
「ストリートファッション1945-1995 : 若者スタイルの50年史」
「デジタル・ジェネレーション : パソコン新世代・文化の誕生」
「マニアの世界 : 「超趣味人類」たちの生態カタログ」
「世界商品の作り方 : 「日本メディア」が世界を制した日」
「気持ちいい身体 : 進化する「カラダと快感」」

当然“靴”という視点ではストリートスナップの多い「ストリートファッション1945-1995」は見応えがありました。
パンプスやヒールはみっしりと履いていて、誰一人カパカパしていない。もっともこのようなストリートスナップに載るような被写体はオシャレさんですから、緩い足元で歩くわけないし採用されないでしょう。

でもいちばん驚いた記述があったのは、「気持ちいい身体」でした。
気持ちいい身体 : 進化する「カラダと快感」

当時表紙に騙された人多かったんじゃなかろうか。



【第二部 変わる身体、変わらない身体】
「日本人のボディサイズ変遷」編集はアクロス編集室です。
その他は著者名が明記されているのですが、ここだけ「アクロス編集室」というくくりなので書かれた方が今もいるのか不明。
「通産省がJIS規格を設定したのは15年前。しかし近年現状に合わないという声が多数寄せられるようになり、(社)人間生活工学研究センターに依頼し大々的な調査に乗り出した」
ここに出てくる「15年前」と「現在」のデータを比較するんです。が、わかりにくいので西暦に直します。

「15年前」→1980年 「日本人の体格調査報告書」
通産省工業技術院
「現在」→1995年(正確には1992年〜94年データの平均)


<参考>日本工業標準調査会
■成人女子用衣料サイズJISの改正について
https://www.jisc.go.jp/newstopics/1998/jisl4005.htm

(社)人間生活工学研究センターはいまでももちろんあって、計測データの販売をしています。
http://www.hql.jp/database/

「日本人の人体計測データベース1992-1994」より関東地方20代男女各300名のデータを使います。
(※本文には「300名」とあったので、図下にある3000名は誤植)
気持ちいい身体 : 進化する「カラダと快感」
左が1980年、右が1995年、細かい数値が見づらいですが黒マスがずらっと並んでいるのは、増加項目です。
身長は155.7→157.9に。
この中で唯一減少項目があって、それが「足幅」9.2→8.7。
気持ちいい身体 : 進化する「カラダと快感」
男性も同じです、足幅だけ白マスつまり減少項目、10.0→9.4。
別ページには関東地方40代男女の比較表もあり、各300名のデータでいずれも足幅だけ細くなっています。
足囲計測はありません。
40代のサイズ変化についてはスタイルが良くなったというより、横に広がり恰幅が良くなったと分析されています。
あと、わたしは以前いまのお子さんは膝下が長くなったと書いていますが(過去ログ)、データをもとにした1995年の分析では膝上が伸びているとあります。
「計測項目全ての値が伸びているなか、唯一の例外は足幅だ。男女ともマイナスとなっている。確かに、周りを見渡してもEEやEEEなどいわゆる“幅広サイズ”の靴やパンプスを履く20代は皆無に近い。」
幅広パンプスの20代が皆無に近いというのは特筆事項じゃないでしょうか。

JIS規格は日本人のプロポーション変化に合わせて規格を変え、アパレルメーカーは独自サイズも打ち出す。サイズが影響する工業製品は多岐に渡りますが、アパレルと下着メーカーは売り上げに直結するので動きははやかった。
さて靴(JISS5037)はというと、JIS規格の制定は1983年、1998年に改正、この具体的な改正箇所はわからない。

アクロス編集部は定点観測しているぐらいなので、観察眼に置いては素人ではないでしょう。その人が「EEやEEEは皆無に近い」と書いていた1995年、20年前です。バブルはとっくに崩壊している。
いつから「かかとカパカパ」がスタンダードになったのか、なにがきっかけだったのか。どうにかして知りたいものです。
「かわとはきもの」のバックナンバー(リンク集)にヒントないかな。

●では現在は?


さて書籍で使われたのは「日本人の人体計測データベース1992-1994」のデータです。これ以降新たに「人体寸法データベース2004-2006」もまとめられ、あしのサイズ計測もされています。
知りたいですよね。

購入しないと見れないのですが発表時に57項目平均値を公開していたようです。(参考リンク
おそらくこのデータをもとにParodyというサイトが男女年齢別表にまとめています。ただこちらのサイト、ニュースは虚構だし経済産業省発表と相違がないのか確証が取れませんが。

■人体寸法平均(手長さ・手首囲・足長さ・足幅など)
http://paro2day.blog122.fc2.com/blog-entry-399.html

男女とも足幅は「日本人の人体計測データベース1992-1994」より広がっています。
アクロス編集部の記事に使われた1995年データは関東地方男女であること、「人体寸法データベース2004-2006」は標本数約7,000人の平均なので完全比較じゃありません。
あやふやですみませんね、無料ではこれが限界。

●体は変えられる


15年20年で見るとずいぶん身体のサイズが変化しているのがわかります。食事や環境の影響でしょう。となると、「こうなりたい」ともっていきたい方に変化させることもできるのではないでしょうか。
「日本人の手の寸法データベース2010」に対して、あしの現在のデータベースもつくって欲しいわ。

本をお返しするにあたり、「特にこの本がおもしろかった、ブログにまとめたい」的なメッセージを送ったところ、そのままお持ち下さいと下さりました。ありがとうございます! 他の項目もおもしろかったから、コピーしようと思っていたので嬉しい〜


20年前のシリーズですが特にこちらは良著。ファッションは情熱である。
もうこのような本を作れる体力のある出版社はないと思う。
図書館蔵書、意外とあるので「図書館で探す」をご利用下さい。