の本のことは2014年に一度書いています。(過去ログ
過去ログ内で引用した水道橋博士の本の感想ページ。 これを読んで興味を持ち、やっと読むことができましたー
http://www.asakusakid.com/past-column/tensai.html


松坂大輔(野球)、イチロー(野球)、清水宏保(スピードスケート)、
里谷多英(モーグル)、丸山茂樹(ゴルフ)、杉山愛(テニス)、
加藤陽一(バレーボール)、武双山(大相撲)、井口資仁(野球)、
川口能活(サッカー)

以上十人が子供の時どんな環境で育ったのか、親がどのように接していたのかなど書かれている本ですが、教育論ではなく学術的にそれがどのように子 供に影響を与え、そして成果を得るに至ったのかが解説されています。運動生理学や脳科学のことも含まれているので、オリンピックやパラリンピックの特集番 組で人体の可能性に触れた体験をしているとよりおもしろく感じます。
天才は遺伝や練習時間、運だけで作られるものではありません。
ではなんなのかがこの本に書かれていますが、特筆すべきはとにかく足裏です。

●松坂大輔 都会育ちながらも 

「人間は二足歩行になってから、足でものを掴むという動作はしなくなったために足の繊細さはなくなったが、中枢神経から末梢神経の構造はそのまま残っている。競技スポーツのパフォーマンスは様々だが、立って行うことに変わりはない。
 それには、足の機能にものを掴む能力を目覚めさせた方が有利なことは自明の理である。どんな競技でも、足で地面をしっかり掴む感覚があれば動作のブレが少なくなるし、体幹もがっしりしてくるため、パフォーマンスは上がりやすくなるといってもいい。」

大都市圏の子供からはトップアスリートは生まれにくいです。足裏を刺激してくれる地面はなく舗装された道を靴で歩く、または車移動、モータリゼーションに身を任せないと安全ではない。
家も狭いし庭もない。
「うちの子はお勉強ができたらいいのよ」
という反論もありますが、頭がのってる土台は体ですよ。

で、松坂の実家もマンション住まいです。運動するにはマイナス要因が多い都市部住まいですが、この点を両親の育て方でクリアーしています。3歳からの保育園でははだし教育で学校に上がるまで真冬でも靴下を履かず素足で過ごしています。
またお父さんが運送会社勤務で勤務時間を選択でき早番勤務にして、毎日午後3時半に帰宅。帰ってきたら親子で暗くなるまで遊んでいた。

●イチロー 父の照れ隠しが 


これは前述していますが、親子喧嘩でぷいっと口を利かなくなった息子にどうやって言い聞かせようかと思案していたとき、投げ出された小さな足を揉んだことがきっかけ。
高校で寮に入るまで7年間、寝る前に1時間ほど揉むのを一日も欠かさず続けたら、揉み始めのころは22.3cmだった足が最後の日には28.5cmになっていた。

●清水宏保 本能的に

「父は運動生理学的な知識はなかったはず」
ですが、度々海に連れて行かれては海岸を素足で走らされ、学校から家に帰ると必ず下駄に履きかえるよう命じられています。鼻緒をぎゅっと締め付けることで拇指球が発達する。
家では足の指先でタオルを掴む動作を毎日やらされている。
さらに特筆すべきは、お母さんが足爪を切ってあげるときにも父より細かな指示を受けているところです。
「特に親指の爪の長さには煩かった。スタートの時に親指に力が入るはずだから、深爪には絶対にするなって」
いやすごい、運動生理学やいまのように足靴の本が一般に出回っていない時代に、お父さんは自分の体の感覚でこのようなことを理解されていたんでしょうか。

●里谷多英 道具も大事 

「子供って、すぐ足や体が大きくなるでしょう。ですから、ワンサイズ大きいのを買えばいいのに、いつもぴったりのものしか買わない。フィットした道具でないと、バランスが崩れると言っていました」
これはお父さんの言葉を振り返って。道具にこだわるのはイチローの父も同じでした。
いい道具は体のためだけでなく、意識が高まる効果もあります。
この本に出てくる家族はみな裕福な家ではないのに、大金を投じているんですよ。そりゃ子供だって道具に込められた意味がわかります。

●丸山茂樹 小柄のハンデを 


喘息もち、アトピー、小柄、そして両親の体格からいっても遺伝的に競技者向きとは言えない。しかし父は諦めない。幼いときに覚えたことは忘れないと、ゴルフよりも柔軟運動を最優先にしています。

他の親のインタビューにはなかったおもしろい点は、ゴルファーのバイブル「モダンゴルフ」に書かれている近代ゴルフ理論を学ぶ前にまず、著者であるベン・ホーガンについて調べています。この方怪力無双だったそうで、怪力の持ち主の理論を自分の息子に応用したら大変なことになると、逆に反面教師としたそうです。
情報が少ないときはどうしてもメジャーな理論に拠りたくなるものですが、そもそもその理論がどんな人物によって書かれているかまで調べている指導者がどれほどいるのか。親だからこそ気がつかれたと思います。

-----
全員分書き出したら感想文ではなくなってしまうのでこの辺にしておきますが、ここでは足靴に特化したテキストを抜粋しています。でもポイントはそこだけではありません。
どの親御さんも口だけではなく自分も同じトレーニングをしたり勉強を教えたりと、「百やれと言うより、一やる姿」を見せています。
それはもう「むせかえるほどの愛」で、10人のうち何人かはすでに親を亡くされていて、短いインタビューにも関わらず読んでいて涙が出てくる。とても濃厚な親子関係が詰め込まれています。

あとがき「教育に悩んでいる大勢の親たちになにかヒントになることがあれば」
最初は渋っていた“平凡な親”である日本の平均的な両親達の言葉です。
モチーフは天才ですが、親の子供に対する愛情と覚悟はまさに育児書です。

読み終わってから、わたしの書写教室に足つぼ刺激のマット置こうかなと思いました。


ちょう痛そう…