は両足試着が原則です。 (前回の続きです
片足だけ靴を履いて歩いたりしないからだ!!
ガッタンガッタン段差ができるじゃないですか。
しかし、百貨店の売り場でも、試着時に箱から片足しか出さないケースの方が多いです。
シンデレラ
シンデレラじゃあるまいし

この現象、これまで推測としては、関西という地域的にも
「せっかち説」
かな、と思っていました。

お客が片足だけ入れてさっさと済ませたい。
両足すすめても断られるケースが多いのかも知れません。
靴の詰め物を出す手間暇もあるし。
でも、売り場の人は最初から片足だけで済まそうとせず、たとえ断られ続けても両足は出し続けてほしいです。
足の状態は、常に変わるから。

しかし過去に衣料品販売をされていた方に、こう聞かれました。
「足って左右どっちが大きいか知っていますか?」
わたしは左。
「なんで左が大きいか知っていますか?」
「軸足だからですよ。右利きの場合、軸足は左になるので左の方が大きいんです。」

この方は衣料品販売をしていたときに靴も売られていたそうで、そのとき試着時に左靴を出していた。
上記の理屈で左足の方が大きいから、左だけ出していたというんです。
「いまの靴屋は右足を出してくるんですよ。だから、左を出せって言うんです。イヤな顔されますけどね」

この話を聞いていたときのわたしの心中、お察し頂けますでしょうか。
あしくつの本を読んできて、「右利きの人には左片足試着」だなんて一度も見たことないです。

本当に軸足の足は大きいのか

地域や人種の違いはあれど、右利きは左利きより多い割合で出現します。
日本人の右利きの割合はというと、
http://www.athome-academy.jp/archive/mathematics_physics/0000000229_all.html
「「まず日本人の“右利き率”ですが、私たちの調査では、
約88%という結果が出ています。
世界的に見ても、香港の約90%、スウェーデンの約94%、トンガの約91%など、
圧倒的に右利きが多いですね。」

こちらのグラフもわかりやすいです。
https://www.gohongi-beauty.jp/blog/?p=12413

8割以上。ではこの方がみんな左足が大きいのか。
左右のサイズ差の統計でキビラは女性のみ、しかも年代も偏りますが、新しいデータなので参考に。
http://www.asahi.com/and_M/information/pressrelease/CATP20144180.html?ref=chiezou
「「KiBERA(キビラ)」会員4万人のお客様を分析してみると、
足長が2.5mm以上違うお客様37.8%、足幅2.5mm以上違うお客様23.4%と
左右の足のサイズが違う多くのお客様が存在する事がわかりました。」

この統計では左右どっちが大きいのかは不明ですが、足長差の割合は8割もない。
統計を見るまでもなく、実体験を踏まえても想像がつきます。
だから、左片足試着という販売法を聞いて、とっさに言葉が出ませんでした。
現場のローカルルールかと思われます。

軸足はサッカーボールを“蹴らない方”の足で、右利きならたしかに左が軸足になりますが、全員がそうとも限らない。
スポーツの場合、右打ち左打ちを変えてみたら成績が良くなったケースもあるし(軸足も変わる)、弱点カバーのために左右どっちも軸足となる使い方をする人もいるわけで、「右利きの人は左足が大きい」というのも、ひどく乱暴な論調に感じます。

ただ、この方は靴売り場ではなく衣料品販売の一環で靴に関わっています。
つまり、売れればよい。フィッティングは二の次。
となると、当てはまりやすい「8割」説を採用した売り方をしたほうが当然数字は上がります。

予断の怖さ

この方は当時の職場で「左片足試着」を現場で伝えられたと言っていました。
歯の磨き方一つをとっても、わたしがこどもの時に推奨された磨き方といまの磨き方は違います。
当時はこれが推奨されていた試着方法かも知れません。
実際に数字をあげた「成功例」として、スタッフ間で情報がアップデートされることなく共有されていたんだろうなと思います。

でもこれは明らかに<予断>です。
人によったら左片足試着で十分かも知れませんが、足はその人の人生と姿勢、生活環境全てが反映されます。
売る側がそのような予断をもっているのは、とても怖い。
お話を聞かせてもらった方はすでに売り場に立たれていないことだし、このような試着方法と理論が拡散される可能性は低いので、わたしはなにも言わず黙っていましたが、こういった<予断>に左右されず靴を選ぶには、個人のリテラシーに依ることがとても大きい。
やっぱり靴選びは、自分が見えない部分に気がついてくれる、信頼できる売り場の方に出会えることが一番大事だなと思いました。

わたし自身、学んだり調べた内容に固執することなく、あちこち足を運んでいますが、同じ轍を踏まないよう心がけようと、身が引き締まった一件でした。
こういうお話しを聞かせてもらえて、よかったです。

長々書いてなにが言いたいのかというと、店員さんがイヤな顔しようが、数値で左右差があろうがなかろうが、靴は両足試着です。
買うのは自分、履くのも自分、店員さんじゃありません。



★★★

5/30(土)あしくつお茶会! 
「NAZ(ナツ)CAFE~夏の陣~」
まだお席あります。

こちらはお勉強メイン、お茶会の話と重複しません。
6月スケジュールです。
「あしを守る靴えらびWS」

【第一部】6/5(金)、6/12(金)19:15~
【第二部】5/29(金)、6/26(金)19:15~
 いずれも約2時間です