こちらは続きにあたるので、検索で来られた方はまずは前回からどうぞ。

●気になるシュージュエリスト


ビラで作った靴について、フィッティングのあわないところは伸ばして調整しますと明記しています。
しかし合皮・エナメルと、ふつうの革とでは「伸ばせるのびしろ」が全然違います。

そしてパターンオーダーした方が「やっぱり痛いんだけど」と靴を持ち込み、シュージュエリストに調整してもらって履けるようになったのかというと…うーん微妙。
購入者のその後のレポートを追うと、「結局キツくて履いていない」というオチが多い。
靴への期待が裏切られたことへの呪詛もさながら、追い打ちをかけるように接客のまずさに対する怨嗟が強烈。

よくまとまっているのがこちら。
・キビラのオーダーシューズへの感想、そして期待 <2014/8月>
http://rie-yonemitsu.hatenablog.com/entry/2014/08/13/224229
・キビラシューズサロン感想と考察。接客ってなんなのかって話。 <2014/10月>
http://rie-yonemitsu.hatenablog.com/entry/2014/10/07/234040

これはひどい。

キビラ(安価オーダー)に足を運ぶ方は、二パターンです。
1「既製靴のサイズがない人、合わない人」
2「既製靴のサイズが合わないと“思い込んでいる”人」


1は、足長が21cmとか25cm以上、左右の足長差がある方など
2は、自分で思い込んだサイズで靴選びをしている方
共通:安く靴が欲しい

安く靴がほしい心理は、単にケチるだけではありません。
高いのを買ってみてダメだった経験があると、靴を選ぶ基準が定まらなくなるからです。
ギャンブル要素が高くなり、傷を浅くするために手っ取り早いのが価格だから。
服選びと大きく違う点です。

本来、2のケースは既製靴のサイズで合う可能性がありますが、知識を持った売り場と店員さんに巡り会えないまま難民になってしまったケースです。
ある意味、売り場と靴業界の取りこぼし。
このように取りこぼされた方が“自分でなんとかしよう”とした場合、安価なオーダーがあれば飛びつくでしょう。

一般の既製靴で合わない人が一縷の望みを抱きわざわざ足を運ぶのですから(店舗によったら完全予約制)、よりセンシティブな接客とヒアリングで慎重に接しないと、大きな失望に直結します。
数少ないGOODレビューを吹き消すほどの、猛威。
シュージュエリストに望まれるのは単なる計測だけじゃなくてそういったカウンセリング的コミュニケーションなのに、多くの方から「ただの計測係だった」という感想を持たれてしまうのは、すごいすれ違い。

顧客の心の中の円グラフ内には、共通である「安い靴が欲しい」と、シリアスな1or2の悩みがあり、この割合のバランスは人によって違います。
とにかく安いヒールが欲しい人なのか、満足のいくフィッティングを期待している人なのか。
バランスを読み間違えたら、こういった接客になると思う。

●靴屋ではなく


キビラはパターンオーダーだけでなく、既製靴も作っています。
これがまた安価な靴なのですが、さらに値引きしてじゃんじゃん売りさばきます。
上記ブログにも「値段に対してプライドなさすぎ」と一刀両断されているとおり、既製靴だけでなくオーダー靴もしょっちゅうセールしている。
そんだけ安くしてもまだ利益が出るということと、その利ざやはどこに活かされているのか。
新店舗の展開資金と、アンミカの広告料ですかね。

あんだけ広告するのは、確かにこれまでの靴屋さんらしくありません。
素材の面とパターンを少なくして安価なパターンオーダー靴を実現させ、類を見ない展開の仕方と広告、どれをとっても靴屋ではなく、ファストファッションに近いです。
そしてクッションのよい中敷きが好評ですが、それはいずれヘタれる。
パターンオーダーの面目にかけてちゃんと取り替え、ケアしてもらえるといいのですが。

●コスプレイヤーにはいいかも


お店に行く前からこてんぱんですが、いいところもあるなと思ったんです。
それは出店リストに秋葉原があるのが珍しい。
どんな意図を持ってここに出店したのかはわかりません。
が、コスプレイヤーには間違いなく安価なパターンオーダー靴って需要あると思います。

コスプレ衣装の一環としての靴は、カラーや形状から既製靴でばしっとハマるものはなかなかない。
足長が小さい大きいとなるとなおさら。
歩くためではなくコスプレ(または撮影)の時間だけ履く靴なので、見た目がコスプレにマッチしたらいいのです。
こういった用途には、安価なパターンシューズはハマるのでは。

●左右サイズ違い対応 


2014年秋より、左右サイズ違いに対応するようになりました。
http://www.asahi.com/and_M/information/pressrelease/CATP20144180.html?ref=chiezou

「今まで「KiBERA(キビラ)」では、足長21.5cm~26.0cm(10サイズ)×足幅S・M・L(3サイズ)×デザイン数18種類×21色素材でオーダーシューズをお作りし、靴を通じてすべての女性の毎日をKira Kira Beautyにしてまいりました。
しかし、左右の足のサイズが大きく違うためピッタリの靴をお作り出来ない非常に残念な結果となってしまう事がありました。
例えば、 「KiBERA(キビラ)」会員4万人のお客様を分析してみると、足長が2.5mm以上違うお客様37.8%、足幅2.5mm以上違うお客様23.4%と 左右の足のサイズが違う多くのお客様が存在する事がわかりました。
これは、「KiBERA(キビラ)」だけがお客様のために最新の3D足型計測器を全店に導入し、お客様の足をミリ単位でキッチリ計測してきた結果判明した事です。」

知り合いが実際に左右サイズ違いのキビラパンプスを作ったんです。
合皮だし仕上がりはお値段なりだけど、片足だけ前滑りする悩みが解消されたのは大きかったと言っていました。

なにより、安価なパターンオーダーシューズは人類の悲願と言ってもいいかもしれない。
以前からキビラについてのネタをこつこつ読んできたので、過度の期待は抱いていません。
最初から100%満足の行く出来映えでなくとも、一条の光として既存の靴業界にはなかったやりかたを超高速で形にしたのはすごいです。

このようなあしくつおたくが複数いる関西の地へ、ようこそ。
新しい靴屋さんは大歓迎です。

前段以上、机上の空論で終わらせず、自分の目で見ないと納得しない女です。
まずは21日オープン二日目、その後、別の日にあしの計測と試着もしています。

次からは実店舗レポートです。