リクエストに向き合う

その4の続きです。

普通のシューフィッターさんだと、こういう品出しはしないと思います。
教科書通りのカウンター、シャンク、ストラップ、ひも靴。
林さんももちろん足にいい靴は重々承知の上ですが、ある日お客様より
「そういう靴(ひも靴)がほしいなら、わざわざ選んでもらいに来ない」
と言われたそうです。

確かに。
ひも靴が足によくてちゃんとひもを結ぶことを知っている人なら、自分で靴を選べるようになります。
パンプスだから難しい、だからプロに選んでもらいたくて来ているのに、
足にいいのはひも靴ですよ(バーン)
なら、何のための靴売り場なのか。
しかもそごう横浜店の靴は、ほぼコンサバ。
コンフォートやウォーキングの面積はぐっとぐっと狭い。
大量のパンプスを前にひも靴出されても、そら一言言いたくなります。

そこで「うちにはありません」ではなく、お客様のリクエストに応えるにはと技術を学んで接客されてきたのが、林さん。
パンプスの足囲を調整したり、どうしたら喜んでもらえるのかをいろんな面で勉強され、そして
「お客様から学ばせてもらっています」
という姿勢です。
大木さんと同じだわ~
お二人とも物腰柔らかで笑顔がいいのですが、こういう信念の方って様相も似てくるのかしらと思いました。

その人のあしを見るということ

それと計測の数値によるサイズ出しをされません。
計測でDだったからとDの靴を履いてみると、痛い。
ブラのサイズが合わないのと同じです。
そもそも、靴自体がJIS規格通りに作られていないケースも多い。

数値で合わせても痛いのは、あしを見ていないから。
わたしの場合だと足囲の足入れ感覚の好み、足の状態やかかとなどから判断して、セパレートパンプスになったのでしょう。
サイズもメーカーによって 23、23.5、24 を試しました。
「これは23ですが大きめの23なので、合いますね」
というその靴の特性を知っているからできる品出し。
そして実際、試着した普通のオープンパンプスよりも楽だし歩けます。
もちろん木型が合うとか、ヒールの太さなんかも影響もあります。

常々サイズ表記はアテにならないと感じますが、わたしにはこういった靴の選び方はほんとに目から鱗でした。
売り場にどんな靴があるのか、それらの特徴と、履く人の好み、そしてあしを見ること全部ひっくるめた上での、理想のフィッティングですね。

こんな選び方は、自力では行き着けないです。
だって自分のことは自分がいちばん理解できないし、売り場の靴にそこまで精通できないです。
「靴はブランドではなく、“ひと”から買うもの」
という考えをまさに体感しました。
ほんとにはるばるやってきた甲斐がありました。
すごく楽しい試着タイムでした。

つぎはインソールコーナーで土屋さんの計測です。こちら
そのあとはこども靴売り場と、婦人靴売り場で気がついたことをまとめます。