「宸翰(しんかん)」というのは天皇が書いた書のことです。
手紙だったり日記だったり歌だったり、内容もいろいろ。
<第一部>はこちら。


■展示品の紹介
http://www.kyohaku.go.jp/jp/tokubetsu/121013/sakuhin.html
画像はこちらのページから拝借しました

「消息」っていうのは、たより・手紙のことです。
誰かの安否じゃありません。
消息
後鳥羽天皇宸翰御手印置文(おていんおきぶみ)

置文はいわゆる遺言、後鳥羽上皇が崩御の13日前に書いた自筆の遺言ということです。
さらに両手の朱印が押されてあり、込められた念というか想いがすごい強烈。

他に後白河上皇の御手印がチラシにも使われている文覚四十五箇条起請文(国宝)にも朱印があります。
人の手形ってあまり見る機会がないのもありますが、いずれも『でっかくて肉厚!!』と思いました。
あと、指紋ならともかく書面に手形を押すって世界的にあまりない気がするんですが、どうだろう。

消息02
後陽成天皇宸翰消息

よくみたら文末に「太閤とのへ」とあるのが、このちっちゃい画像でもわかります。
太閤秀吉の中国進出(前の方4行目あたりに“高麗国への”が見えます)をやんわり引き留める内容なのですが、これ、一行目から順番に読む消息ではありません。

解説がないと読めない! 
読むためにあちこちブロックが飛びます。
最初から構成を考えないとバランスよく散らして書けないわけです。
すごいわ…
あと、『信長に「蘭奢待」くれっていわれて困ってるねん』な消息もあります。

戦国時代のネタとなるとぐっと理解度が深まるのですが、あまり御所に着目していないわたしはとにかく解説がたよりでした。
それぞれの天皇について、両親とどのような人物でなにに秀でていたのかなど解説がしっかりあるため、ちょっとした天皇マニアになれます。
しかし、似たような名前が多いから、全く暗記できない。
ただ、字の特徴はよくわかりました。

そして「現存している直筆はこれ一編のみ」という作品がかなりあり、意外と天皇の書って残ってないんですよ。
そんな中である天皇だけは、十代の字と成人してからの字の変容を見ることができます。

よく考えてみれば、近代まで天皇は京都御所にいたんです。
時の為政者と隣り合わせだったのを考えると、常に権力に翻弄される、あまり安定しない環境だなと思います。
その中で連綿と先代から受け継がれたものをとくと理解し、時には凌駕するほどの技量を得るまでの静かな鍛錬の積み重ねがこれらなのだと思います。

豪華絢爛とは違う迫力があり、いずれも素晴らしい書ばかりでした。
自然に関する歌が多いのも、自然だけが心を慰めたのかな…とか。
いまのわたしたちのものが、こうやって百年経っても千年経っても残っているとはちょっと思えませんでしたね。
iPhoneとか未来の人が「なんて美しい造形!」って思ってくれなさそうじゃん…

残念だったのは音声ガイド。
展示物にある解説の言い回しを、ちょっと変えているっていうのが9割でした。
音声ガイドがないとわからなかった内容は、1点ぐらい。
ひどいよ~(○`ε´○)

ガイドよりも、入り口にあった貸し出しの鉛筆を借りておいたらよかったー!!
出品目録が同じような名称ばっかりで、特徴がさっぱりわからん!!
入場者の何人かが貸し出し鉛筆を活用しているのをみて、あとでほんまに後悔しました。
『あの技法、なんだったっけ!?』っていうのがあり、ここにも書けず残念。
今度別の企画で入り口に鉛筆が置いてあったら絶対借りよう。
あれ以外の筆記具は館内に持ち込めません。

心を大きく揺さぶられたのは、二点。
入ってすぐのところにある後陽成天皇の「龍虎」「梅竹」大字。
1メートルを超える紙いっぱいに二文字書かれている、とても大きく力強い字。
心打ち抜かれ涙でそうでした。

もう一点は最後から二番目、大正天皇による一行書「天智明達」。
展示作品紹介のページ一番下にもありますが、画像や印刷物は全く別物です。
御手による書のエネルギーというのもを、実感しました。
やっぱ生はいいね!!

来年東京国立博物館で特別展「書聖 王羲之(おうぎし)」があるんですが、王羲之の真筆は現存していないのが残念。
東博にも行きたいんだけど。

そんなわけで音声ガイドと途中のベンチで休み休みしながらの3時間、足が棒のようです。
京都駅までの戻りが少々キツかった。
帰りは混み合う新快速ではなく、快速でまったり帰宅しました。
さすがに疲れました。
京都に着いてすぐお土産を買っておいてよかったです。